ゲストとの垣根を超えた関係へ。
TABICAをきっかけに広がるホストの未来。

あなたにとってのTABICAはどんなもの?

今回の一連の取材では、神奈川県横浜市のかくれた里山、寺家ふるさと村で自然体験を提供しながら暮らしているアレックスさんを訪ね、ホストとしてのこれまでの歩みや収入のこと、多くのリピーターを生む体験のポイントを探ってきた。

ライターを担当している私、高木孝太郎は、TABICAのホストに会うこと自体が初めてであった。しかもアレックスさんの活動場所は自分が生まれ育った場所の近くでもあったので「自分にとってのあたりまえが、他の人にとって価値ある体験になる」と身をもって感じた。「もしかしたらこれも体験にできるんじゃないか」と自分自身の暮らしや趣味のとらえ方も変わったように思う。

そして何よりも変わったといえるのは、TABICAというサービスに対する認識だ。取材前、いち参加者としては旅行の予約サイトでは見つからない体験に出会えるサービス、フリーランスの立場としては収入を得るための新しい手段といったようなイメージをもっていた。取材を進めるにつれて、ホスト活動をやることでの広がりやアレックスさんの想いを知り、TABICAは単に体験をマッチングさせるサービスではないな、と思うようになった。この記事では、アレックスさんの最近の取り組みとこれからの展開にも触れながら、TABICAを活用することの可能性を考えるヒントにしていく。

※今回の取材は、緊急事態宣言解除後の2020年5月31日に実施されたものです。

アレックスさんは、リノベーションした建物を中心に、畑や中庭のある一帯を「里のengawa」として活動の拠点にしている。
「里のengawa」は、東急田園都市線の青葉台駅からバスに乗って「鴨志田団地」のバス停を下車し、自然あふれる寺家ふるさと村のエリアを10分ほど歩いた先にあり、中心となる建物のすぐ目の前に手作りの鶏小屋や、野菜を育てている畑がある。

ゲストとの新しいかかわり方

アレックスさんは緑に囲まれた里山での暮らしを、非日常の体験として主にファミリー向けに提供してきた。春の竹の子堀りに田植え、夏は流しそうめんに、秋は稲刈り、冬には味噌づくりや焚き火と、季節に応じたプログラムすべてに参加し、その利用回数は10回を超えるヘビーユーザーもいるそうだ。

「ゲストの方にもっと喜んでもらうには何をしようか、新しいことをやったら楽しいだろうか、どうしたらもっと交流できるだろうかといつも考えているんです」

というアレックスさんは、2020年3月に「アレックス農園応援団」という月額制会費プランをスタートした。

入会資格はアレックスさんの提供したプログラムに5回以上参加していることで、月額会費は1家族あたり5000円となっている。メンバー特典は、先行予約の権利や、メンバー限定の交流イベント参加資格、手づくりの保存食品や畑でとれた野菜のプレゼントなど盛り沢山だ。入会資格のあるゲストは30組以上、入会済みのゲストも10組を超えているそう。「5月は里のengawaのことをお客さんと一緒にやってきたんだけど、それがすごい面白かったんだよねぇ」と噛み締めるように振り返るアレックスさんの姿が印象的だった。

「この欄間もフェンスも、みんなで一緒につくったんだよ」と買ったばかりのおもちゃを自慢する子どものように次々と紹介してくれた。
ゲストの方と一緒につくったという竹でできた欄間。ゲストと協力してつくったものをあげるときりがない。

ホストとしても、慣れたゲストの参加は余計な気遣いが不要だし、回数を重ねる中でお子さんの成長を見届けられる楽しみも増して、メリットが多いように思われる。そんな中でもアレックスさんにとっての一番のポイントは、近い目線で考える仲間が増えたことなのかもしれない。この場所をよく知っているゲストたちが「こんな場になったらいいな、あれもしたいな」と妄想をふくらませ、アレックスさんと一緒になって手を動かす。「アレックス農園応援団」をはじめたことで、暮らしをシェアする対象だったゲストたちが、それを一緒につくっていく仲間になったのだ。アレックスさんの新しい取り組みは、そんな仲間集めにもつながるTABICAの新しい活かし方だと感じた。

助けを求めることで地域に入り込んでいく

取材中、むかいにあるお店に訪れた方々から挨拶されるアレックスさんの姿から、想像していた以上に地域に受け入れられているんだなと感じた。

アレックスさんの活動には、実は多くの周辺住民がかかわっている。活動拠点である「里のengawa」は近くの木工所や近所に住む大工さんから廃材をもらい、周辺に住む方々の協力も得ながらリノベーションしてできたし「いずれは納屋を農機具の博物館にしたい」というアレックスさんのもとには古い農機具が集まり、TABICAの自然体験にも活用されている。

もちろん拠点を構えているということも大きいが、ひとりで全てを完結させていたら、ここまで活動の幅は広がらなかっただろう。やっていることや考えていることをオープンにして、時には助けを求めるアレックスさんの姿に、自分もなにかできないかと巻き込まれていく住民の方も多いはずだ。そういった方々からのサポートをうけることで、結果として地域に入り込むことになる。

文化や暮らしに関する大きなことでなくても、体験のための場所やモノを用意したり、プログラムをつくったりするその過程に、サポートを受けるある種のかかわりしろを残すことで、ホストとゲストという関係性とはまた違ったものが生まれる。そうやってかかわる人が多くなれば、多くなるほど活動の幅は広がっていくのだ。

地域活性化プロジェクトとなると、地域の方々に受け入れられることが意外と難しかったりすると聞く。理想の暮らしを求めて寺家ふるさと村にきたはずが、その過程でサポートを受けながら、結果として地域の方々を巻き込んでいったアレックスさんの活動を見ると、地域との関係づくりにはこんなはじまり方もあるんだなと気づかされる。

取材当日のおやつは食べ応えのあるおはぎ。体験の途中では、むかいでお店を営む大家さんの手づくりの食べ物でもてなされることも多い。
「里のengawa」の内装の多くは、寺家ふるさと村に暮らす方からいただいたものを活用している。
納屋には取材陣が一体なにに使うのかわからない古い農機具がたくさん。
さわやかな風が流れる1階は大きいテーブルや堀こたつ、シェアキッチンのスペースもあり、ワークショップやデスクワークにも◎。2階にも部屋があり会議などに利用可能だ。

場がひらかれていることで生まれる可能性

アレックスさんが進めているもう一つの取り組みが、シェアスペース・シェアオフィスとして「里のengawa」を活用することである。週末以外に売り上げがあがるということももちろんメリットではあるが、それだけではない。自然体験以外でもこの場所をオープンにしておくことで、自然豊かな暮らしに魅力を感じる共通の土台がありながらも、得意なことがバラバラで考え方や立場も異なるひと同士が出会う。そんな出会いを演出することで、アイデアが生まれ、新しい体験もできあがるかもしれない。「里のengawa」に対してのアレックスさんが想いを語ってくれた。

「ぼくがここに座ってて、いろんな人がそれぞれ好きなことをやってるんだ。シェアオフィスを使ってる人がいて、こういうイベントをやりたいんだけどって相談があって、自発的にコトが起きていったらいい。みんながイキイキとしていられる場所になってほしいね」

いまは少なくなった縁側のように、気軽に立ち寄れ、ゆっくりできるコミュニケーションの場にという想いが「里のengawa」には込められている。

取材当日、過去の体験に参加した方が木工作業をしに「里のengawa」を訪れていた。その日、プログラムに参加するわけでもなく、自分でもっているスペースかのように自然につかっていたので、スタッフかと勘違いするほどだった。そんな姿を見て、ゆったりとした時間の流れを分かち合いながら思い思いのことをして過ごす、アレックスさんの想い描く未来は、既につくられはじめているのだと感じた。

理想の暮らしを思い描きながら、好きなことをシェアして活動しているアレックスさんをひとつの物語の主人公と考えてみると、体験に何度も参加するうちに「こんな場になったらいいな。あれもしたいな」とホストと近い目線で考えるゲストが出てきたり「これ使わない?」と地域の方々がホストを手助けしていくさまは、仲間を増やしていく物語のワンシーンのようだ。

体験の内容は、自然体験や街歩きといったカテゴリの中では並列に見えるかもしれないが、その先の物語はホストそれぞれのもの。好きなことをシェアする体験を入り口として、それぞれの物語との出会いを演出することが、単なる旅行予約のサービスにはできない、TABICAに求められる役割なのかもしれない。

「アレックス農園応援団」をはじめとした仲間たちとアレックスさんが一緒に紡いでいく物語が楽しみだ。

今回インタビューに応じてくださった アレックスさん、本当にありがとうございました!アレックスさんが提供している体験はこちらからご確認いただけますので、ぜひご参加ください。

また、ホストになることに少しでも興味をもたれた方は、体験を掲載するまでの流れや、ホストとしての活動をサポートするコンテンツもご覧になってみてくださいね。

文章:高木孝太郎/写真:竹田誉之/編集:柳瀨武彦

アレックス農園インタビュー Vol.1

アレックス農園インタビュー Vol.2

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