年間10回超えのリピーターを生む自然体験。
満足度のカギは“ないこと尽くし”だった。

こんにちは。東京での暮らしを謳歌しながらも緑あふれる環境が恋しくなりだした三十路ライター高木孝太郎です。自分の好きなことを体験として提供する「ホスト」とそれに参加する「ゲスト」を繋げるプラットフォーム「TABICA」。そんなTABICAに知る人ぞ知る自然体験の人気ホストがいるという噂を聞きつけてやってきた。

こんな片田舎に人気体験のホストがいるなんて

目の前に広がる田園風景。親戚が暮らす田舎へと電車に揺られ、長距離を移動してきた…わけではない。ここは東京から1時間もかからない横浜市青葉区に位置する「寺家ふるさと村」。何を隠そう「寺家ふるさと村」は、私が生まれ育った家から歩いて5分ほどの距離にあり、慣れ親しんでいるエリアだ。人気のホストがいると聞いた時は、たしかに素敵な場所ではあるけれど、いったい何をどうしたら、人からお金をもらえるような体験ができるのだろう、と不思議でしょうがなかった。

好きなことを体験として提供しながら暮らす生活は、とても魅力的なもの。TABICAの「ホストになるには」のページにもあるように、ホストの登録はたった1分、体験を作成し登録したらすぐに公開でき、気軽に始めることができそうだ。体験を提供するホストになるということ自体に興味はあるものの、コンテンツをどう用意したらいいのか、本当に集客できるのだろうかなどと不安を感じて、一歩踏み出せない方も多いのではないだろうか。

しかも、今回たずねるホストは2019年度にTABICAの満足度部門でMVPを受賞しているとのこと。どれほど特別な体験を用意しているのだろうか。今回の取材がホストになることを検討している方の背中を押したり、すでにホストになっている方の次の一手につながることを願いつつ、あわよくば自分もTABICAのホストになれるかも…という淡い期待を胸に現場に向かった。

※今回の取材は、緊急事態宣言解除後の2020年5月31日に実施されたものです。

今回取材させていただくアレックスさんの拠点である「里のengawa」。東急田園都市線の青葉台駅からバスに乗って「鴨志田団地」のバス停を下車し、自然あふれる寺家ふるさと村のエリアを10分ほど歩いた先にある。

事前の打ち合わせでは「バス停まで迎えにいくよ」と配慮いただき、到着するとさっそくコーヒーを淹れて取材陣をもてなすホスピタリティに溢れるアレックスさん。当日はリピーターのゲストファミリーがくる予定だったが、体験がはじまる前に少しお時間をいただいた。

2001年にフランスから日本にやってきたアレックスさんは、お米や野菜を作りながら、季節ごとに変わっていく日々の暮らしを体験として提供している。

アレックスさんは、2016年にTABICAのことを知ったのだそう。

「仕事で稼いだお金を、趣味で参加していたお米づくりや竹林整備の活動に使ってたんだけど、TABICAと出会ってから趣味でお金を稼げるようになったんだ。ここは大事なポイントだから、しっかり記事にしてくださいね(笑)」

のっけから取材内容にまで配慮いただき、さすがの人気ホストっぷりだ。TABICAをはじめた当初から集客自体は困らなかったようだが、振り返ってみて、一番苦労したことを質問してみた。

なにをしたらいいかは、ゲストに聞いてるんです

「プログラムを考えることだね。お客さんがどうしたら喜んでくれるか。いつもずっと考えてるよ」

どのような体験を提供するかは、やはり悩むポイントのようだ。人気ホストのアレックスさんだって悩んでいるのだから、ホストになれるかもなんて甘い考えだったな…。少し気落ちしながら、悩んだ時はどうするのか聞いてみると「TABICAのスタッフに相談もするけど、ぼくは言うこと聞かないからね(笑)。そういう時はゲストに聞くんだよ!なにしたらいい?って」と、なんともシンプルな答えが返ってきた。しかし、そんなやり方をしたら、ゲストの機嫌を損ねないのだろうか。ここは満足度部門のMVPホストの言葉を信じて取材を続けてみる。今日の体験がはじまるのが楽しみだ。

納屋に移動して、ご近所さんからいただいたという、昔の道具を見せてくれるアレックスさん。とても嬉しそうだ。こういった道具を修理して、体験にも活かしているとのこと。

納屋に所狭しと並ぶ年季の入った道具たち。日本人の私たちですら使い方がわからないのに、一体どうしているのかと聞くと、斜め上の答えが返ってきた。

「YouTube!だってみんなわかんないんだもん(笑)。いまの60歳ぐらいの人たちはもう知らないんだ。ばばちゃん(※大家さんの愛称)にきいてもさ、何十年も前、10代の頃にやってたから『あ〜やってたなぁ』ってだけで覚えてないんだよ(笑)」

地域の人と繋がるのはなかなかの苦労だし、昔の資料を読み込んだりするのかと勝手に想像していたが、自然体なやり方だった。

「さわらないでね!危ないからね!指切っちゃうよ!」とおどけながら、道具を見せてくれる姿はとてもチャーミング。人気のホストと聞いて構えていた部分もあったが、一流ホテルのそれとは違ったサービス精神で、親近感が湧いてくる。体験前に時間をいただいておいてなんだが、よくよく考えてみると、準備らしい準備もしていない。きっと専門知識と経験に裏打ちされた丁寧な接客に、考え尽くされたプログラムがあるに違いない、と私が勝手にハードルをあげていたようだ。しかし、まだ本番はこれから。きっと何か必殺技のような、一押しのポイントがあるに違いない。そうこうしているうちに、当日のゲストファミリーが到着した。

さっそくコーヒーを振るまい、メモを取り出した後の第一声は

「さて、きょうはなにをしましょうか」

なにをやるかはゲストに聞く、先ほどの言葉どおりだ。どうやら本日は特別プランだったようで、TABICAのプログラム紹介のページでも“その日になにをするか、前もって予定せず、その日に出来ること、やること、一緒にいろいろ考えましょう。30分〜2時間程度の作業をいろいろ出来るように用意します。1日いろいろ挑戦して楽しくやりましょう。自由に遊ぶこともでき、ここの1日で色んなことをやりながら開放できたらと思います。”と書いてある。

本当にいいの?と、はたから見ると不安になってしまう。なにか作りたいという要望があったようで、キッチンにあるものを見ながら、イメージをすり合わせていく。事前のやりとりでゲストからのリクエストは受けながらも、現地にきてから一緒に考えていくスタイルは、機嫌を損ねるどころか楽しい雰囲気を創り出している。「あとはなにする?竹でなにか作る?ペンホルダー?花瓶?あとは、虫採り…」今日この時に体験できることを提案していき、ゲストの気分によってカスタマイズしていく。どうやら今日は、わらを使ってすだれを作ったり、昆虫採集をしたりして遊ぶらしい。オーダーメイドの1日がはじまった。

体験のキーワードは「エンパワーメント」

時にサポートをしながらも、底力を信じて任せていくと、普段は親御さんが止めてしまうようなチャレンジをお子さんが体験できる。参加したゲストが投稿する体験のレビューには「知らず知らずのうちに過保護になっていたことを思い知らされた。子どもの成長を感じられた」といったコメントが多く寄せられているのも納得である。お子さんが飽きてしまいそうなところをアレックスさんがうまく采配しながら、あっという間にすだれが完成した。

その後も田植え用の苗を披露したり、薪用の木材に隠れた虫を探したりと、手を変え、品を変え進めていくアレックスさんの対応力もさすがだが、それはプログラムが決まっていないからこその賜物。移ろいやすいお子さんの気分を考えると合理的でもあるし、その場にあるものを活用して、なんでもないものがコンテンツになっていくことが自然体験の醍醐味でもあるなと感じた。

畑に生えている桑の実。親御さんたちも懐かしがりながら召し上がっていた。
体験中は、ちいさなお客さんの飛び入り参加も。
飼っている鶏たちは日々の暮らしで出る野菜くずなどを食べている。
卵を産む場所も鶏ごとにこだわりがあるそうだ。
お昼ごはんの準備も「エンパワーメント」。採れたて卵を使った卵かけご飯も、もちろん当日決まったメニューだ。

ごちそうさまをしてからは、みんなで協力して片付け。食後には手作りのチョコレートケーキまで振るまわれた。本日の体験は夕方まで丸一日ということだったがせっかくの家族団欒の時間を過ごしてもらうべく、後ろ髪を引かれながら取材を切り上げた。

ないこと尽くしがスーパーホストの秘訣

同行したのは一組限定の特別プランだったが、通常のプログラムもコアとなる体験内容だけ決めて、あとはその時にできるものを成りゆきで進めているそう。スケジュールを決めないというのは、裏を返せば、一緒に考える時間を楽しむことができ、その時の気持ちにあわせてやりたいことに取り組めるやり方でもある。希望したものすべてをやりきれるわけではないことが、また来たいという気持ちにつながるのだろう。

振り返ってみると「細かいスケジュールは決めない」「やりたいことはゲストに聞く(自分で悩みすぎない)」「基本はゲストに任せる(サポートしない)」と、もし自分がホストになったら取り組みそうなことはことごとくやっていない。そして、この“ないこと尽くし”こそが、満足度につながっているのだと感じた。

満足度部門のMVPホストの体験は、プログラムを提供する、されるという関係ではなく、ホストにとってあたりまえの暮らしを一緒に楽しんでいるようにすら見えた。ホストとして何よりも大切なのは、道具を説明している際のアレックスさんの姿から溢れていたような「これが好きなんだ、素敵でしょ?」という好きの気持ちと、それを分かち合おうとする、ちょっとしたサービス精神なのかもしれない。アレックスさんは、TABICAが目指す「暮らしを気軽に体験できる世界」の担い手としてぴったりのホストだ。人気プログラムの裏側を知り、ホストになれるかもと淡い期待を持っていた私も、どんな体験が提供できるかを悩む前に、まずは自分自身の好きと向き合ってみようと思う。

今回インタビューに応じてくださった アレックスさん、本当にありがとうございました!アレックスさんが提供している体験はこちらからご確認いただけますので、ぜひご参加ください。

また、ホストになることに少しでも興味を持たれた方は、体験を掲載するまでの流れや、ホストとしての活動をサポートするコンテンツもご覧になってみてくださいね。

文章:高木孝太郎/写真:竹田誉之/編集:柳瀨武彦

アレックス農園インタビュー Vol.1

アレックス農園インタビュー Vol.3

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