好きなことが仕事として生活の柱に。
200回以上の体験を開催してきたベテランホストの歩み。

「好きをシェアして、好きで繋がろう」というコンセプトのTABICAは、自分の好きなことを体験として提供する「ホスト」とその体験に参加する「ゲスト」を繋げるプラットフォームとして、2015年にスタートし、2020年現在では1万人を超えたホストが参加している。

登録されている体験は、親子に人気の自然体験やものづくりのワークショップ、知的好奇心をくすぐる街歩きに、占いやヒーリングのようなお一人様に人気のプログラムなどさまざま。ホストも農家や占い師、週末の趣味を体験として提供しているサラリーマンの方がいるなど多種多様だ。

ベテランホストを訪ねて横浜の隠れた里山へ

今回は、TABICAがはじまって間もない2016年から自然体験を提供しはじめ、なんとこれまで開催したプログラムは200回以上、いまではホストとしての仕事をメインに生計をたてているというベテランホストのアレックスさんを訪ねた。社会人生活が長くなると、好きなことを仕事にする、なんていうことは一部の限られた人にしか許されない特権だ、と半ばあきらめの気持ちも芽生えてしまう。ライターを担当する私、高木孝太郎はそんなサラリーマン生活から逃げ出したい気持ちでフリーランスとなり、理想の暮らしを求めてもがいている一人でもある。趣味で取り組んでいたことから収入が得られるようになり、生活の柱になっていった道のりは、どれほど険しかったのだろうと想像しながら話を伺った。

※今回の取材は、緊急事態宣言解除後の2020年5月31日に実施されたものです。

今回取材させていただくアレックスさんの拠点である「里のengawa」。東急田園都市線の青葉台駅からバスに乗って「鴨志田団地」のバス停を下車し、自然あふれる寺家ふるさと村のエリアを10分ほど歩いた先にある。

熱中のなかに体験のタネはもうある

2001年にフランスから日本にやってきたアレックスさんは、お米や野菜を作りながら、その一部を竹の子堀りや田植えといった体験にし、季節ごとに変わっていく日々の暮らしをプログラムとして提供している。幼い頃、田舎で畑の手伝いをしたり、森で遊んだり、家の手直しをしていた時間が、理想の暮らしの原体験になっているそうだ。いまの拠点にうつって活動する以前のお話からインタビューをはじめた。

「ここにくる前は仕事として英会話講師をやりながら、趣味として竹林整備とお米づくりのボランティア活動をやってたんだよね。英会話の生徒さんのおばあちゃんがここの大家さんと偶然つながっていたこともあって、この場所を紹介してもらったんだ。2015年に寺家町にうつって、自分でお客さんを集めて自然体験もやってたんだけど、英会話や大工の仕事もあるので、本格的にやるのは大変だった。どうやってお客さんを呼ぼうかな、なにをやろうかな、お金にもならないしな、と悩んでた時にTABICAの方がぼくの体験を見つけて連絡をしてくれたのがはじまりなんだ」

畑の横にある竹林から、そうめんを流す用の竹を切りだす。竹をつかってお箸を作れるのも嬉しい。(提供:TABICA)
畑の中で流しそうめん。夏は最高に気持ちよさそうだ。(提供:TABICA)

TABICAのスタッフと一緒になにができるかを考えながら、初めて提供することになった体験は流しそうめん。そうめんを流すための竹を切り出すところからはじまる体験は、竹の切り方や見極め方などの豆知識も交えながら進んでいく。アレックスさんがボランティアで竹林整備に関わりながら身につけた知識や経験が存分に役立っている。なにを体験のとっかかりにしようか悩まれている方は、ボランティアでも参加したいと自分が思えるような活動に関わることがヒントになるのかもしれない。
TABICAのサポートは、企画内容の相談だけでなく、企画のタイトルづけやシステムの設定、安心して体験を進めるための保険制度など多岐にわたっている(なんと、ホスト向けの「流しそうめん体験開催マニュアル」まで用意されている)。状況に応じて寄り添ったサポートがあるのは不安だらけの新米ホストにとっては心強いだろう。

地域の人に声をかけながら、廃材や畳を集めてつくった空間は温かみがある

生活の柱にしていくには自然体験がおすすめ

ホストとしての体験の提供がはじまってからも、もとは会社のオフィスだったという空間を心地よくするためにDIYで整えながら、英会話講師の仕事や大工のアルバイトを続けていたそう。お米や野菜を作りながら、自然の中でゆったりと過ごす、そんな理想の暮らしに近づいていく中でだんだん提供できる体験が増えていった。

「6月の流しそうめんのあと、田植えは間に合わなかったから、10月の稲刈り、そのあと脱穀、竹の子堀り…とやっていったんだ。一年中プログラムを提供できるようになってから、TABICAをメインにできるようになったと思う。自然体験をやってるのは週末や連休だけど、それで400万円くらいにはなってるんじゃないかな」

TABICAのホストをはじめる前、アレックスさんにとって竹林整備やお米づくりはボランティアの一貫だった。むしろ仕事で稼いだお金をその活動に注ぎ込んでいたことを考えると、自然体験の週末ホストで400万円も収入があるというのはとんでもない進歩だ。
自然体験の参加者の多くはファミリー層。祝日も含めた休日は年間100日以上あり、一人当たりの料金は4000〜5000円、季節ごとに内容が変わりリピーターも多いため、参加者は10人以上が通常運転だそうなので、たしかに週末の活動だけでも生活の柱になりそうである。
長距離の移動もはばかられる近頃では、都会に住む多くのファミリーが近場で自然に触れる機会を求めている。また、季節の移り変わり=体験内容の変化にもなり、年間を通じてプログラムを続けやすい自然体験で生計をたてることは、むしろ無理がないようにすら感じる。

収入の観点で考えると、ファミリー向けで一回当たりの提供単価が高く、リピート頻度も高い傾向にあり新規ゲストの集客に比重をおかなくても参加者が確保しやすい自然体験は、生活のメインとすることも現実的だろう。ホストでの活動が生活のメインになる前とあとでの変化を聞いてみると、アレックスさんは本音を語ってくれた。

同席したTABICAスタッフの顔色も伺いながら笑顔で振り返るアレックスさん

実は手数料が高いなと感じていたんです

TABICAでは、ホストとして体験を掲載することには費用がかからないが、体験の予約があった場合は設定した体験の価格に対して手数料が18%発生する(詳しくはこちら)。

「最初は手数料が高いなと感じたんだけど、いまでは納得してるよ(笑)。お客さんの管理とかできるようになったら、全部自分でやれるんじゃないかと思ってたんだけど、手間を考えたりすると体験に集中する方がやっぱりいいかな。ホストを応援してくれるキャンペーンもあったりして、リピーターで予約してくれた場合は手数料も安いしね」

季節によって内容が変わる自然体験はリピートにもつながりやすい。満足度の高い体験を提供してリピーターを増やせば、ホストの手元に残る金額は大きくなる。ホストになろうと考えている方の多くが、誰かを喜ばせたいという気持ちをもっている中で、もっと喜んでもらおうとする頑張りがしっかり返ってくるというのは嬉しい仕組みだ。

履歴機能がリリースされるまでは、体験の記録やお子さんの名前をノートにとっていたそう。当時はお客さんがくる度に、いつきたのか、何回目なのか確認してからゲストを迎えていた。
最近アレックスさんがはじめたという「TABICA思い出日記」。体験に参加したらスタンプを押してもらい、思い出を形として残していく。リピートの際には前回を振り返りながら、楽しく体験がスタートできる。お子さんの成長を見守れることもホストの醍醐味だそう。

日常の一コマが体験になるから続けられる

ホストとして生計を立てているのだから陰ながらの努力もあるのだろうと、アレックスさんの日々の暮らしが気になって、どんな一日を過ごしているか聞いてみた。

「朝はコーヒーからはじまって、草むしり、草刈り、畑仕事、内装のためのものづくり…。体験を提供する日はもちろん仕事として考えてるからお客さんのことをメインにしてるんだけど、田植えとか稲刈りとかは自分だけでもやらないといけないからね。労力がかかって楽しみづらい、草むしりはお客さんにやってもらうのにもう少し時間かかりそうだけど(笑)。山形や仙台、長野とかに旅行にいくこともあるけど、日本の伝統のものを体験したりすると、それも体験に活かせるよ」

お客さんがいるかどうかという意識の差はあれど、日常の一コマが提供する体験であり、その一コマに参加してもらうことが仕事になっているというのは、ホストを長く続けるための秘訣ともいえるだろう。提供している体験の内容は、実は毎年大きく変わってはいない。小さなブラッシュアップはしているものの、暮らしを少しずつ良くしていった中での産物なのである。新しく家具を作ったり、地元のものを使って瓶詰めの保存食を作ったり、そのプロセス自体もコンテンツになっているので無理がないのだ。

ゲストの方と一緒につくったという竹でできたハンモック。
地元の食材を使った瓶詰めの食品づくりもスタート。

収入を得るための仕事と、興味のある活動の時間が完全に分かれていた段階から、TABICAのホストになることで段々と境目がなくなっていったアレックスさんの道のりを聞くと、自分らしく働くということが、ただの理想論ではないようにも感じられる。副業であれ、生活のメインにしていくのであれ、ホストになること自体は、自分らしく働くための手段だ。ホストとして提供できるような体験は自分の日常にはないと感じる方には、ボランティア活動の経験がプログラムに活きたアレックスさんのように、まずは興味のある分野での活動に参加してみたり、そこに友人を誘ってみる、自分の好きを身近な範囲でシェアすることからはじめる一歩もあるのかもしれない。

今回インタビューに応じてくださった アレックスさん、本当にありがとうございました!アレックスさんが提供している体験はこちらからご確認いただけますので、ぜひご参加ください。

また、ホストになることに少しでも興味を持たれた方は、体験を掲載するまでの流れや、ホストとしての活動をサポートするコンテンツもご覧になってみてくださいね。

文章:高木孝太郎/写真:竹田誉之/編集:柳瀨武彦

アレックス農園インタビュー Vol.2

アレックス農園インタビュー Vol.3

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