日本情緒あふれる鎌倉で、 路地裏にひそむ魅力を見つける。

 
日本情緒あふれる鎌倉で、
路地裏にひそむ魅力を見つける。

日本文化に触れられる観光地として屈指の人気を誇る街、鎌倉。歴史が色濃く残る一方で、カフェや雑貨店が多く、街歩きが楽しいことでも有名だ。鎌倉で育った半井孝一さんは、ディープな街歩き体験のホストとして、多くのゲストを楽しませている。伝統と革新が絡み合うこの街で、毎回新しいルートを提案するその姿勢には、誰かを楽しませたいという想いと自分も楽しみたいという気持ちが自然に共存していた。

半井 孝一さん

神奈川県鎌倉市育ち、横浜市在住の会社員。学生時代から登山やヨットに熱中した根っからのアクティブ派であり、現在も毎朝早朝に一駅歩いて通勤するほどの街歩き好き。趣味の合う娘さんから、カフェや街歩きの最新情報を入手している。好きな食べ物はステーキで、飲みに行くのは老舗の焼き鳥屋などが多い。昔の映画音楽やネットラジオが好きで、なぜか自宅に二つあるスマートスピーカーで聴いている。

つくりたいのは気持ちのいい距離感

鎌倉街歩きのホストを務める半井さんは横浜市内から、都内の食品会社へ通う会社員だ。元々写真を撮るのが好きで、通勤の前後に都内の街を歩いてはシャッターを切り、ブログに掲載していた。そんな中、SNSを通じてTABICAを知り、写真撮影体験のホストをやってみようかと説明会に参加。具体的にイメージしていく中で、もっと自分ならではの内容を追求したいと考え、青春を過ごし、今でも定期的に足を運んでいる鎌倉の街歩き体験を行うことにしたという。「鎌倉には緑と海があって、地震や戦災から逃れた歴史が街中に残っています。けれど新しい店もどんどんできる。その懐の深さがとても独特なんです。」

半井さんがTABICAのホストになった理由のひとつに、シェアリングエコノミーという考え方に共感したということがある。「利益や規模を追いかけるのではなくて、小さくても濃くて長く続けられるようなことをやりたいなと思っていました。ちゃんと顔の見える関係で価値を交換することって、東京で忙しく働いていると忘れてしまいがちですから。」半井さんは観光名所の奥にあるディープな鎌倉を体験するためのドアを、やさしく開けてくれるドアマンのような存在だ。

ようこそ、ディープな鎌倉へ

この日の鎌倉街歩き体験は、鎌倉が誇るローカル線・江ノ電の由比ヶ浜駅からスタートした。初対面のゲストたちも、同じ体験を選んだという共通点があるからか、自然と和やかなムードだ。駅から細い路地を5分ほど歩くと、一つ目の目的地である紅茶専門店「鎌倉香山」に到着する。一見民家なので、案内がなければ気づかずに素通りしてしまいそうだ。

「鎌倉のカフェは大きく4種類に分類できるかなと思っています。老舗名門系、都心店進出系、古民家改装系、自宅改造系です。こちらの香山さんは自宅改造系の象徴のようなお店ですね。」席につくと、半井さんから手作りの鎌倉街歩きマップが配られ、一日の流れが説明された。そして、人との距離感を大切にする半井さんならではの展開に。「半井というのも呼びづらいと思いますので、今日はこうちゃんと呼んでくださいね。それでは、一度練習してみましょう。せーのっ!」ゲストたちの「こうちゃん!」という声はあまり揃わなかったが、不思議とゲストたちは皆ニックネームで呼び合う方が自然な距離感になっていた。

香山のマスター選りすぐりの高級英国紅茶が運ばれてくると、その美しい茶器にゲストも興味津々。香山のマスターは応えるように親切に説明してくれる。「本当に紅茶の美味しさを引き立たせるためには、銀製のものがよいとされています。それから、ティーポットから落ちる最後の一滴はゴールデンドロップといわれ、一番香り高いんですよ。」こうちゃんの存在によって、ゲストと店主の距離感も自然と近くなっていた。

面白さは見つけていくもの

おいしい紅茶と優雅な音楽で早くも至福のときを過ごした一同は、次の目的地へと街を歩く。「鎌倉は昔からある細い道が多く残っていて、一本路地に入ると迷ってしまうほど複雑です。けれどそこに、面白さを見つける楽しみがあるんです。」いつも違ったルートで街歩きをおこなっているため、こうちゃん自身も毎回新しい発見があるという。ゲストたちもつられるかのように、面白いものを見つけようというモードで路地を進んでいく。

鎌倉文学館へと続く風情ある石畳を歩いた後は、二つ目の目的地である「TERRACE REI」へ。「こちらも自宅改造系の隠れ家のようなカフェです。マダムの人柄がよくあらわされた素敵なインテリアで、女性のお客さんに大人気です。手作りのケーキも本当に絶品ですしね。」

おいしいスイーツとコーヒーを味わいながら談笑するゲストたちは、すっかり鎌倉を満喫していた。REIの店主は半井さんについてこう話す。「半井さんが連れてきてくださるお客さんはいつも素敵な方ばかりで。うちのお店はなかなかわかりづらい場所にあるので、こうしてTABICAの街歩きで来ていただけるのをいつも楽しみにしています。」自分で場所や物を持っているわけではない半井さんは、人と人をつなぐという立場でみんなを幸せにしているホストの一人だ。

街を舞台にみんなで遊ぶ

「かつて劇作家の寺山修司は、舞台は役者と観客が一緒に作るものだと言っていました。わたしの街歩きも、ホストとゲストと街の方々が一緒につくっていくようなイメージでやっています。毎回違った筋書きのないドラマが楽しめますよ。」そう話すこうちゃんは、街歩きのホストをはじめてから、自分もどんどん元気になっているという。見方次第で街は遊び場になる。面白いものを見つけようとする姿勢は、人を元気にするのかもしれない。

街歩き体験が終わり、せっかくだからと鎌倉駅まで歩いた。また新しいコーヒーショップがオープンに向けて工事を進めていた。きっとこの店も、こうちゃんの鋭い観察眼にキャッチされ、新しい街歩きルートの一部として地図に記されることだろう。

Photo: 吉森 慎之介   Writer : 柳瀬 武彦

 

TABICAのホスト

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