【40代から始める投資術】ファイナンシャルプランナーに聞いた、単身世帯が必要な老後の対策とは?

突然ですが、30年後の生活を想像したことがありますか?

少子高齢化が叫ばれる日本では、毎年約20万人以上の人口が減少し続けています。その要因は、日本の未婚化・非婚化による出生率の低下とされています。「平成28年版少子化対策白書」によると、1980年代の未婚化・晩婚化が進行し、90年以降は大きく未婚率は上昇。現在、男性は「5人に1人は生涯独身」、女性は「10人に1人は生涯独身」というデータが算出されています。

参考:総務省統計局データ

その結果、2010年を境に、少子高齢化が加速し、大規模な人口減少に突入。さまざまな社会問題も要因ではありますが、それだけではありません。特に大きな問題とされるのは、労働人口減少によって招かれる、“労働環境の悪化”や“生活保証の負担”です。それにより、国内全体の経済活力を失う事態が発生してしまうことが危惧されているのです。

少子高齢化は、日本という社会にとっては一大事ですが、個人の生活に直接影響が出ることは少ないと言えるかもしれません。それよりも、生涯独身率が上がるということは、男性も女性も『一度も結婚せずに老後を向かえる』人が大量に増えるということです。独身生活は気ままな一面もありますが、老後の蓄えなどを一人でまかなわなければいけません。

こうした事態を目の前に、これからを生きる我々がどう対応していくのか。この記事では、これからの厳しい現実に備え、生活の軸となる経済面の対処方法について紹介していこうと思います。まずは、40代女性が80歳まで生きると仮定したとき、最低限必要な生活費はいくらで、年間どれくらいの出費があるのか。そのためにお金はどれだけ必要なのかを、厚生労働省や総務省の統計調査をもとに考えてみたいと思います。高齢単身無職世代(だいたい60~70歳前後の方々)の家計イメージから見てみましょう。

高齢単身無職(シニア)世代の家計イメージ

「高齢者の独り暮らし」は、ほとんどの人が現役時代に貯めた貯金を切り崩しながら生活をしています。総務省の「家計調査年報 2016年」を見る限り、多くの単身世帯が収入と支出のバランスがマイナスに偏っているのです。

「家計調査年報 2016年」の単身世帯のデータを見てみましょう。

高齢単身無職世代の収入と支出

スクリーンショット:家計調査報告(家計収支編)平成28年(2016年)平均速報結果の概要 | 総務省

平成28年度の社会保障給付金(年金・介護費・医療費含む)は、満額「111,375円」。満額支給されるには、40年以上年金を支払うことなどそれなりの条件が必要とされるので、国民平均では10万円を切ってしまうのではないでしょうか。グラフデータを見てみると、ほぼ9割が「衣・食・住」にあてており、趣味やコミュニティなどの娯楽へ1割強消費しています。

しかし満額受け取っている人でさえ、実質の不足分が約36,311円とされており、貯蓄や仕送りからの切り崩しがなされているはず。その額、年間で約44万円。仮に70歳で定年退職し、80歳まで生きるとすると、10年で440万円以上の不足分を補わなければなりません(しつこいですが、満額受け取っている人を元に計算していますので、もう少し不足分が多いと思われます)。

平成25年度の生命保険文化センターによる「生活保障に関する調査」によると、“ゆとりのある老後資金”は月額約34万円ほど必要だとされています。先ほど、年金の満額支給が約11万円というデータがありましたので、毎月23万円を用意しなければなりません。仮に、女性の平均寿命である89歳(平成29年 完全生命表に基づく)まで生きたとすれば、定年退職から24年分の老後資金が必要です。

単純計算すると「(12ヶ月×24年)✕(ゆとりある資金月額34万円ー年金11万円)23万円 =6624万円。約7000万円です。

年金を満額もらえない人はさらに資金が必要になり、おおむね1億円必要だという計算になってしまいます。

ほとんどの世帯主では手が届かないこの金額。定められた労働時間を働くだけでは稼ぐことはできません。そこで、貯めたお金を増やす方法として「投資」が考えられます。続いては、老後の生活をより豊かにするため、今後どうお金を使うべきかを考えてみましょう。経営者であり、ファイナンシャルプランナーの資格を持つ梅田カズヒコ氏にお話をうかがいました。

将来の自分に「投資」することを視野に入れよう!

まずは「投資ってなに?どんなものがあるの?」「借金しそうで手が出せない」なんて思っている読者のために、メリットとリスクについて簡単に紹介します。

「投資」のメリット

1:投資額と投資期間、リスクの許容度に応じて、相応のリターンが期待できる

2:労働による報酬と違い、体を壊したり、リストラにあってもお金を生み出せる可能性がある

3:起業や副業と違い、時間や人脈がない人でも挑戦することができる。

「投資」のリスク

1:失敗すると、元本(元の資金)を失ってしまうことがある。

2:レバレッジをかけたFXなどギャンブル性の高い投資は、元本どころか借金を背負う可能性もある。

3:情報や知識を持っている人が強く、素人はカモにされやすい。

投資といえば自分になじみがないものと思う方もいますが、そうではありません。梅田氏によると、現代人はすべて投資を行っているとも言えるそうです。

「ほとんどの人が給料は銀行への口座振り込みだと思います。口座に振り込まれた給与は自動的に預金・貯金になり、預けている金額に応じて利子が支払われます。預けた預金で銀行は国債などを購入したり、お金を借りたい法人や個人に貸し付けて、利息の収益を得ようとしたりしています。そのような投資によって銀行は利益をあげています。そして、そのうちわずかは、利子として僕らに返ってきます。つまり、預金にお金を預けるということは、間接的に投資活動を行っていると言えるでしょう 」(梅田氏)

<投資としてリスクが低いが、ほとんどリターンが得られないもの>

・普通預金・定期貯金

・国債など、公債

<リスクが高いが、うまくやればリターンを得られるもの>

・投資信託

・株式投資

・FX

・不動産投資

・先物取引など

「このように、投資には様々な種類がありまして非常にややこしいのですが、利益を得る方法は、大きく分けて2種類しかありません。(1)購入時と、売却時の差益、差損によって利益を狙う方法です。つまり、安く買って高く売ることを期待するわけですね。株、投資信託、FX、住宅など、すべてにこの法則は適用できます。(2)所持している投資商品から、利子、配当などを受け取ること。これは外貨で言えば金利ですし、住宅で言えば家賃をもらうようなものも含まれます。売り買いせずに現金を増やすことも可能です。この2つの方法をそれを先に理解しておくとそれぞれの投資法について理解が早まるかもしれません」(梅田氏)

慎重派におすすめは『国債』、忙しい人でも購入可能な『投資信託』

「慎重派の方におすすめなのは、国債です。国債とは、簡単に言えば国にお金を貸すということです。一般の方であれば、『個人向け国債(3年<金利固定>)』、『個人向け5年<金利固定>』、『個人向け国債10年<金利変動>』などが買い求めやすい商品です。これらは、銀行など金融機関の窓口などでも購入できます。また、これらの商品と積立制度を利用することによって、毎月定額を積み立てたりすれば、老後への礎となるでしょう」(梅田氏)

確かに国債であれば、日本という国が破綻しない限りは、損を被ることはない投資です。金利は0.05%(2016年5月現在)と小さいが、それでも何もしないよりはいいかもしれません。「慰め程度の利益しか得られないが、それでもこれをきっかけに投資とはどういうものかを体感してもらえれば、今後の投資のきっかけとなるかもしれないですね」(梅田氏)。

「元本(投資資金)を割ってもいい方で、仕事が忙しくて金融情報を毎日チェックできない人でもおすすめなのが投資信託です。投資信託とは、『信じて託す』の文字通り、専門機関にお金を預け、代わりに運用してもらうことを言います。運用益が出れば、そこから手数料・管理費などを差し引いた額があなたの利益になります。ただし、運用損が出ても、手数料は払わなければなりません」(梅田氏)

投資信託は、損をする可能性もありますが、リスクを取る投資のなかでは「比較的現実的な投資」だと梅田氏は話します。投資信託には、日経平均株価など何かの指標を基準に値動きするインデックス投資と、プロのトレーダーに運用を任せるアクティブ投資があります。

「投資信託は運用方法さえ間違えなければ比較的勝率の高い投資と言えます。また、老後資金を蓄えるなど、長期間の投資にも向いています。ただし、商品数が多く選ぶのが難しいこと、ハイリスクな投資信託も多いこと、交付目論見書は専門用語が多く勉強に時間がかかること、銀行の窓口などで説明を受けても基本的には契約を取りたい人が窓口にいるので、ほしくもない商品をおすすめされてしまうこと、などはじめての人には難しいさまざまな課題があるでしょう」(梅田氏)

梅田氏が話す、初心者が投資信託に挑戦するときに覚えてほしいことは以下の3つです。

1.失っても生活に支障ない、無理のない範囲で投資を行うこと。

2.なるべく多様な種類の銘柄を組み合わせて投資を行うこと。

3.理解できなことがあれば、急いで行動することを避け、きちんと勉強すること。

梅田氏によると「金融機関に行く前に、本などを読んで勉強してみた方がいい」とのこと。素人でもわかりやすく読みやすい本として、勝間和代さんの『お金は銀行に預けるな』(光文社)を挙げていただきました。

「投資信託をする際に、初心者の方に実践してほしい投資方法があります。ドルコスト平均法と言うのですが、これは毎月定額を決まった銘柄で積み立てて買うという方法です。投資に絶対はありませんが、ドルコスト平均法は、仕組み上、『安値のときにより多く買い、高値のときに少なく買うことができる』『長期で続ければ投資時期を間違えるリスクを軽減することができる』などのメリットがあります。万能ではないですが、素人でも簡単に実践可能なので、興味があれば調べてみてください」(梅田氏)

国債から投資信託まで購入でき、節税効果もある個人型確定拠出年金はおすすめ

「何度も言うように、投資に絶対はありません。ただし、『個人型確定拠出年金』は、加入できる人であれば、『絶対』に節税効果のある投資と言えます。専用の口座を開設し、そこに毎月定額を積み立てていく制度なのですが、拠出金の分だけ節税効果があります。急にお金が入り用になっても60歳にならないと実際には受け取ることができないなどのデメリットはありますが、現行の制度のなかでは数少ない、万人におすすめできる制度と言えるでしょう。また、積み立てているお金はこの特定口座内で、先述の投資信託、国債などを購入することで、増やすことも可能です」(梅田氏)

個人型確定拠出年金は、拠出(積み立てた)額に応じて節税メリットがあること、また、口座内で運用益が出た場合にも税金を支払う必要がないことなど、さまざまなメリットがあります。証券会社や銀行などで開設できます。

「かなり使える制度なんですが、銀行などの窓口で開設したいと話しても、行員はあんまり乗り気じゃないかもしれません。それほど多くの人が利用していないこと、また売る側の行員側には、それほどメリットがないからかもしれません(笑)」(梅田氏)

株式やFXはハイリスク・ハイリターンなので、よくわからないままはじめてはいけない

株式やFXは知識が必要になります。株式投資は、株式市場に上場している会社の株を、証券会社を介して購入、売却することを指します。株式市場は世界中にありますが、日本でいちばん大きな市場は東京証券取引所(東証)です。株式投資で利益を出すには、それなりに知識が必要ですが、株主になれば配当金のほかに、株主優待などを受け取ることも可能です。始めるにはそれなりの知識が必要でしょう。

「私はソフトバンクの株を持っていますが、携帯電話の代金は株主優待割引があってお得です」(梅田氏)

続いては、FX。正式名称は「外国為替証拠金取引」です。円やドルなど世界の通貨を取引しますが、FXの場合は、証拠金を元にレバレッジと呼ばれる、少ない証拠金を元に大きな取引を行うことができます。ただし、これは借金をしてお金を調達しているのと同様なので、取引にはかなり注意が必要です。

「高倍率のレバレッジをかけたFX取引は、ギャンブル性が高いですね」(梅田氏)

梅田氏いわく「『投資家』と呼ばれるプロフェッショナルが市場に参加している以上、プロ以上に市況を理解し、売買を判断できるスキルとノウハウを手にするのは実質不可能と言っていいでしょう。もちろん、なくなってもかまわないというお金で挑戦する限りは止めはしませんが、最初は投資信託あたりからはじめてみるのが個人的にはおすすめです」とのこと。

マイホームの購入も、投資である

単身世帯でも、一軒家やマンションなどの不動産を購入する人も少なくありません。不動産投資は、不動産を購入して貸し出し賃料を得たりするイメージですが、梅田氏によると「自宅を購入するのも投資の一部」なのだそうです。それは、リターンもあれば、リスクもあるという意味なのだとか。

「老後でそれほどお金に余裕がなかったとしても、賃貸に住んで家賃を払い続けるのと、物件を購入してそこに住むのでは、金銭的にも精神的にも余裕の違いがあることは想像できるかと思います。長引く不況などを背景に、金利も安く抑えられているので、住宅ローンを組んで住宅を購入するのも一種の選択かもしれません」(梅田氏)

住宅ローンには、実は隠れたメリットがあります。それは、ローンを組んでいる本人がもし不慮のことがあり死亡してしまった際には、残っているローンが免除されるというメリット。これは、住宅ローン購入時に団体信用生命保険に加入するからです。

「自宅を購入する際に皆さんは、服や車を買う感覚で不動産を選ばないようにしていただければと思います。なぜなら、自宅の購入は、多くの人にとって最も大きな投資と言えるからです。一度に取引する額も大きく、その後の人生を左右する投資です。もちろん、実際に住む自分たちが納得できる物件を購入すべきですが、それに加え、売却する際や貸し出す際などに将来的な市場価値を判断して購入することを忘れないでください」(梅田氏)

では、どういった物件を選ぶのがいいのでしょうか。これも購入する前に本などを読んで知識を身につけることや、不動産屋の言うことは100%信じずに常に疑う必要があるとのことです。例のごとく、梅田氏におすすめの本をあげてもらったところ、沖有人さんの『マンションは10年で買い替えなさい』(朝日新聞出版)などは、投資としての自宅購入という視点を身につける一助になるかもしれないとのこと。

さらに、梅田氏に自宅を購入する際に気をつけておきたいことをうかがいました。

1.10年後、20年後、30年後の自分の人生で起こるかもしれない事態を想定して購入すること。

2.10年後、20年後、30年後の不動産市況を予測して購入すること。

3.買わないことも一つの選択であるということ。

「2」の不動産市況については、予測が難しいと梅田氏は言います。「わかっていることは、日本の人口は減るということです。日本の人口が減るが、新しいマンション・一軒家は増えます。それは空き家が増えること、住宅がだぶつくことを意味しています。すでに地方では空き家問題は深刻ですが、それは今後都心でもどんどん問題になっていくことでしょう。それでも、時代が変わってもみんながほしがる物件もあるはずなので、そういう物件はどういう物件なのか考えてみることです」(梅田氏)

投資ビジネスを模索して、自分に合った投資を始めよう

世の中にはさまざまなビジネスが存在します。たとえば、「駐車場ビジネス」「飲食店のオーナー」「コンビニ経営」「フリマアプリの運用」。これらもある種の投資と言えるかもしれません。

冒頭で投げかけた質問、「皆さまは30年後の生活を想像したことがありますか?」。30年後の自分の生活は、予想し難いものです。しかし、いかなる場合でも、自分の身は自分で守れるように準備しておくことが大切です。なかでも、もっとも計画的に準備しやすいものは「お金」ではないでしょうか。備えあれば憂いなし。政治や経済の知識はもちろん必要ですが、将来の自分への投資も忘れずに。ぜひ、この記事を参考にしてくださいね。

取材協力

梅田カズヒコ/株式会社プレスラボ代表

1981年生まれ。2002年よりフリーライター、2008年に株式会社プレスラボを創業。「ダイヤモンドオンライン」(ダイヤモンド社)、「日経トレンディネット」(日経BP)など、ビジネス系のWebサイトへの執筆歴多数。本業は編集者・ライターだが、ファイナンシャルプランナー(3級)の資格を持つ。
HP:http://www.p-labo.biz/